!!!辞書にみる「集印帖」 このサイトで「集印帖」と呼んでいるものは、[[実例|集印帖の呼び方(実例)]]をみてもわかるように、「集印帖」、「集印帳」、「蒐印帖」、「朱印帖」、「スタンプ帳」など、さまざまな呼び方がある。 そこで、「集印帖」が辞書ではどのように書かれているか、日本の代表的な国語辞典である岩波書店の[『広辞苑』|https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91]で調べてみた。 !!『辞苑』 新村出編『広辞苑』は、最初は『辞苑』という題名で、博文館から昭和10(1935)年に出版された。この『辞苑』には、「朱印」の項目はあるが「朱印帖」(しゅいんじょう/しゅいんちょう)(※1)はなく、「集印帖」(しゅういんじょう/しゅういんちょう)や「スタンプ帳」(すたんぷちょう)もなかった(※2)。 どうやらこの時代には、「朱印帖」も「集印帖」も、辞書に収録されるほど一般的な語ではなかったようである。 !!『広辞苑』 昭和30(1955)年、『広辞苑』の初版が出版された。この辞書にも「朱印」の項目はあるが、「朱印帖」(しゅいんじょう/しゅいんちょう)はない。それどころか、最新版である平成30(2018)年の第7版にも「朱印帖」の項目はなかった(※3)。また、「スタンプ帳」(すたんぷちょう)の項目も同様で、初版~第7版のいずれにもない。 初版から第7版にあるのは、「集印帖」(しゅういんじょう)だけである。なお、辞書の項目は「しゅういん‐じょう」となっていて、「しゅういん‐ちょう」ではない。 版ごとの変遷を追うと、次のようになる。 *『広辞苑』初版 1955.5 p.1004 しゅういん‐じょう【集印帖】シフ‥デフ 社寺などに参詣するたびにその社寺の印を捺(お)してもらって その印影(いんえい)を集める帖。多くは画帖仕立。 ※初版では、「社寺などに参詣するたびにその社寺の印を~」と書かれていて、社寺の印を集めることを中心とした記述になっている。 *『広辞苑』第2版 1969.5 p.1040 *『広辞苑』第2版補訂版 1976.12 p.1040 しゅういん‐じょう【集印帖】シフ‥デフ 旅行・参詣などの記念に、名所や社寺その他の印をおして、 その印影(いんえい)を集める帖。多くは画帖仕立て。 ※第2版と第2版補訂版では、「旅行・参詣などの記念に、名所や社寺その他の印を~」となっていて、「集印」の範囲が広がっている。 *『広辞苑』第3版 1983.12 p.1127 *『広辞苑』第4版 1991.11 p.1207 *『広辞苑』第5版 1998.11 p.1252 *『広辞苑』第6版 2008.1 p.1314 *『広辞苑』第7版 2018.1 p.1370 しゅういん‐じょう【集印帖】シフ‥デフ 旅行・参詣などの記念に、名所や社寺その他の印をおして、 その印影(いんえい)を集める帖。多くは画帖仕立て。スタンプ帳。 ※第3版では、第2版の説明の最後に「スタンプ帳」が追加され、「集印帖」と「スタンプ帳」を同義のものとみなすようになった。それ以外は第2版と同じである。第4版以降はこの第3版と同じで、変更点はない。 !!まとめ 『広辞苑』の各版を調べたところ、以下のことが判明した。 *戦前の『辞苑』には、「集印帖」「朱印帖」などの語は掲載されていない。 *戦後の『広辞苑』には、「集印帖」(しゅういんじょう)はあるが、「朱印帖」はない。 *「集印帖」(しゅういんじょう)の項目は昭和30年の初版からあるが、第2版から「集印」の範囲が広がり、第3版からは説明の最後に「スタンプ帳」を追加している。 それにしても、初版から最新版まで50年以上ずっと「集印帖」だけで、「朱印帖」の項目がないというのは意外だった。 !注 :※1: 「朱印帖」は、歴史的仮名遣いだと「しゅいんでふ」となる。また、「集印帖」は「しふいんでふ」となる。「帖」は、歴史的仮名遣いだと「でふ」だが、これを現代仮名遣いにすると「ぢょう」で、「ぢ」は「じ」と書く規則があるので「じょう」となる。 :※2: 同じ時期に発行された、上田萬年、松井簡治共著『大日本國語辭典 修訂版 全5巻』(冨山房, 1939-1941)や、『大辭典 全26巻』(平凡社, 1939-1941)も調べたが、同じ結果だった。 :※3: 念のため「御朱印帖」(ごしゅいんじょう/ごしゅいんちょう)も調べたが、やはり初版~第7版のいずれにもなかった。 ---- 2015年1月8日作成 {{category 集印帖全般}}