!!!集印帖No.275 [集印帖No.275|/shuincho/275]は、カード式の集印帖である。 カードの大きさは、縦90mm×横94mmで、表面には枠線、裏面には方眼が印刷されている。 また、カード裏面の右側には「捺印開始 1ST OF STAMP」、中央には「REMARKS (備考欄)」、左側には「捺印場所 WHEN STAMPED」と書かれていている。 図 1 集印帖No.275−[表側33ページ|/shuincho/275/275a031/#i275a033]、[裏側33ページ|/shuincho/275/275b031/#i275b033] {{ref_image 275033.jpg}} このカードの所有者は、ねずみ色の厚紙(教科書の裏表紙を流用したもの)を、カードよりすこし大きいサイズに切ったものを2枚作っている。たぶん、この厚紙の間にカードをはさんで保護したのだろう。 また、カードを持ち運ぶための[布製のカバー|/shuincho/275/275c001/#i275c001]には、「史蹟名所風景入 趣味のスタンプ蒐集帖」と書かれた紙が貼ってあり、中にカードが差し込めるようになっている。 図 2 集印帖No.275−[付属資料1|/shuincho/275/275c001/#i275c001](部分) {{ref_image 275cover.jpg}} なかなか凝ったつくりだが、このカード式集印帖、実は戦前の官報に掲載された広告から、河内書店のものとわかっている。 !!!河内書店の広告 官報に掲載された河内書店'''「趣味のスタンプ蒐集帖」'''の広告は、[国立国会図書館デジタルコレクション|https://dl.ndl.go.jp/]で見ることができる(※1)。 そのうち、[昭和8(1933)年5月18日|https://dl.ndl.go.jp/pid/2958383/1/17]の広告から抜き出してみると、以下の通り。 ""MK新案ルースリーフ式 旅のシーズンに 替紙差替自在 ""  ""日本・台湾・朝鮮・満洲 ""史蹟名所風景入 ""'''趣味のスタンプ蒐集帖''' ""附スタンプ蒐集日誌 ""  ""鉄道駅、逓信省 '''風景入スタンプ蒐集帖'''を ""是非共貴君のポケットに携帯せられて趣味 ""あるスタンプの蒐集と共に裏面の蒐集日誌 ""へ旅行日記又図案説明を記入し「捺印開始 ""記入欄」も特設あり尚本帖はルースリーフ ""式なれば蒐集不足の個所は通信にても自由 ""に蒐集が出来る新案モダンブックである。 ""  ""附録 ""自昭和六年七月至八年八月 ""風景入駅局スタンプ捺印所一覧とスタンプ蒐集の心得 ""  ""趣味布製MK独特ブック差入 ""中味寸法縦二寸九分横三寸一分 ""本帖使用の紙は特漉クリームコットン紙 ""  ""定価金四拾銭=送料金貳銭 ""替紙 金貳拾銭送料金貳銭 ""  ""東京市日本橋区吉川町通り ""振替東京六六七九〇番 ""'''河内書店''' "" 官報. 1933.5.18, 1911号, p.522. より引用 この広告の'''「趣味のスタンプ蒐集帖」'''の部分は、集印帖No.275のカバーに貼られた紙とデザインが同じである。 図 3 官報 昭和8(1933)年5月18日(1911号)の広告(部分) {{ref_image kampo19330518.jpg}} また、カードの大きさ(縦二寸九分横三寸一分=88mm×94mm)もほぼ同じなので、集印帖No.275は河内書店のものとして間違いないだろう。 なお、広告の最初に「MK新案ルースリーフ式」とあるが、MKは、河内書店の代表者「河内政吉」(※2)の頭文字のようである。 この'''「趣味のスタンプ蒐集帖」'''は、「風景入駅局スタンプ捺印所一覧とスタンプ蒐集の心得」という付録がついて定価が40銭、そしてカードの替紙が20銭、送料は各2銭と書かれている。 この価格を、[[御朱印の値段]]で使った換算方法で計算すると、現代の価格は次のようになる。 ,{c},,{RIGHT},{RIGHT} ,換算方法,40銭{CENTER},20銭{CENTER} ,郵便はがき,1388円,694円 ,企業物価指数,284円,142円 ,消費者物価指数,720円,360円 これが高いのか安いのかよくわからないのだが、昭和8年の当時、こうしたものが作られるぐらい、スタンプの収集が流行していた、ということなのだろう。 !注 :※1: 河内書店は、戦前の官報に9回広告を出しているが、そのうち次の3回に「趣味のスタンプ蒐集帖」の広告が掲載されている。 *[昭和8(1933)年3月16日(1861号)p.455|https://dl.ndl.go.jp/pid/2958332/1/16] *[昭和8(1933)年5月18日(1911号)p.522|https://dl.ndl.go.jp/pid/2958383/1/17] *[昭和9(1934)年12月11日(2384号)p.315|https://dl.ndl.go.jp/pid/2958860/1/16] :※2: 河内政吉の経歴については、出版タイムス社編. '''日本出版大観'''. 出版タイムス社, 1930.10 に掲載された[「精華堂 河内政吉氏」|https://dl.ndl.go.jp/pid/1176632/1/211]と、新聞之新聞社編. '''全国書籍商総覧 昭和10年版'''. 新聞之新聞社, 1935.9 に掲載された[「盛華堂 河内書店 河内政吉」|https://dl.ndl.go.jp/pid/1688509/1/223]を参照のこと。 2019年4月29日作成 {{category 集印帖全般}}